取り組み事例紹介

楽天株式会社

〈業種〉サービス ─〈分類〉ライフライン(一般適応)

トップレベルの人材獲得を目指して進める海外採用

Q. 外国人社員採用の背景と現状を教えてください。

当社はインターネットショッピングモール「楽天市場」を運営する楽天市場事業をはじめ、インターネット総合旅行サイト「楽天トラベル」運営のトラベル事業、インターネットオークションサービス「楽天オークション」運営のオークション事業やインターネット銀行「イーバンク銀行」を運営する銀行事業など様々な領域でインターネット・サービスを展開しており、インターネット上でのあらゆるニーズをサポートする、ワンストップサービスを提供しています。迅速かつ堅実なサービス提供を実現するための組織フォーメーションを整備していますが、その中でも開発部は楽天の提供するあらゆるサービスを支えるシステム部門であり、1,000名を超える技術専門組織です。
 外国人社員の採用に関しては、以前より日本国内にいる外国人留学生の採用を実施していましたが、現在は海外の大学からの直接採用も行っています。これには「トップレベルの新卒を採用していく」「日本の少子化・技術者不足に対応する」「今後の楽天のグローバル化・海外展開の布石とする」などの理由が背景にあります。
 また、中国やインドなどの新興国では技術革新のスピードが非常に早く、できるだけ最近まで現地にいた方々のほうが、当然のことながら現地事情に明るく、現地市場を見据えた開発などでも能力を発揮してくれると考えているからです。2009年入社の新卒採用から中国・インドの大学を出たITエンジニアの採用を開始しています。2009年に12名入社し2010年には41名、2011年には100名の入社を予定しています。

Q. 中国やインドなど海外の新卒学生は、なぜ日本の楽天への入社を希望するのでしょうか。

海外のエンジニアが来日し当社に入社を希望するモチベーションは大きくわけて3つあると思います。1つ目は当社はインターネットサービスを提供する会社であるということで彼らのような新興国の学生にとって将来性を感じるポイントになっているようです。2つ目は日本で働くことができるということ。3つ目は将来、当社が海外に開発センターを開設するときにスタートアップメンバーとして携われる可能性があるということです。
 また、同じ海外採用でも中国人とインド人では日本に対するスタンスは異なります。例えば最近の中国人にとっては日本の情報は手に入りやすくなっており、日本で働くといっても海外で働く特別なことだとは思っていないので「とにかくいい会社に入りたい」というような学生も多くいます。一方でインド人は、物理的・文化的な距離があるためか「日本社会・文化のいいところに触れてみたい、吸収したい」という、少し憧れと尊敬に近いスタンスがありますね。

Q. 採用時のポイントを教えてください。

採用面接をする際の注意点でも中国人の場合とインド人の場合は異なります。技術者なので技術レベルをみるという点は両国ともに同じですが、人物像としてはやはり異なります。例えば、日本人を中間値とすると中国人は一般的に明るく、場合によっては自己PRをし過ぎるきらいがあります。一方でインド人は控えめであり、少しおとなし過ぎるということがあります。その意味では中国人を採用するときは少々おとなしめの人物を、インド人を採用するときはコミュニケーション能力が高く明るい人物を採用するようにし人物像でもバランスをとれるように心がけています。
 採用責任者であると同時に、外国人社員のキャリアモデル(ロールモデル)でもある私(何氏)が応募者に意識的に伝えていることは、「楽天に入社して自分はこれを成し遂げる、というきちんとした目標をもって入社してほしい」「入社後は日本語ですべての業務を行えるようになることが必要」という点です。

Q. 外国人社員の受入や活用に向けた施策について教えてください。また、今後の取組について課題はありますか

漢字圏の中国と非漢字圏のインドではそれぞれ期間はことなりますが採用決定後に渡日前・後には日本語研修を行なっており、インドの場合は日本語検定3級取得後の渡日がひとつの目安になっています。業務に直結し、社内で利用されている日本語の技術用語については社内でデータベース化をして技術用語集をつくっています。語学研修以外の入社時研修では自分の考えを適切に相手に伝えるという、コミュニケーション自体をどうやってよりよく行っていくのかという点やホウレンソウ・ビジネスマナーなどを重視して研修プログラムを開発しており、日本人新入社員とは別枠で2ヶ月間を行っています。さらに当社には、社員が成長し、楽天のビジネスを成功に導くために、社員の考え方の指針となる「成功の5つのコンセプト」というものがあります。
 これには個人・組織がビジネスを成功させるためのエッセンスが詰まっており、このコンセプトのもと、楽天の若い社員は切磋琢磨し、急速に拡大する楽天のビジネスを支えているのですがこの考えをきっちりと理解できるような研修も行っています。これらの基本には「楽天で働く社員としての考え方・姿勢」をきっちりと身につけさせたいという想いがあります。
 楽天の事業拡大とともに海外採用人数が09年12名、10年41名、11名100名と急激に伸びているので、この拡大に対応し優秀な人材を獲得できる採用体制・効果的な育成体制を仕組みとして作っていくことが今後の課題だと考えています。

〈企業情報〉
楽天株式会社
設立 1997年2月7日
本社所在地 東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド楽天タワー
資本金 1,076億500万円(2009年12月31日現在)
売上高 単体1,135億5,500万円 連結2,982億5,200万円(2009年12月期)
従業員数 単体:2,625人 連結:5,810人(2009年12月末現在)
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