取り組み事例紹介

株式会社インターネットイニシアティブ

〈業種〉情報通信 ─〈分類〉コミュニケーション(対人適応)

外国人社員のスペシャリスト志向と組織文化・価値観の共有

Q. 外国人社員活用の背景と現状を教えてください。

当社は1992年、日本で初めてインターネットの商用化を目的とした会社として設立されました。 以来、ネットワーク技術の分野においてイニシアティブを取り続け、日本のインターネット業界をリードしてきました。日本の情報通信社会の発展に貢献していくとの思いをもって、「インターネットイニシアティブ」という社名としています。設立当時はインターネット普及の黎明期でもあったので上場も1999年8月にまずは米国ナスダックに上場し、その後2006年12月に東京証券取引所市場第一部に上場したという経緯もあります。事業内容はインターネット接続及びアウトソーシングサービスの提供、ネットワークシステムの構築・運用保守、通信機器の開発・販売等を行っています。当社の人員構成は全従業員の約7割が技術部門、約2割が営業部門、約1割が管理部門の人員構成となっています。近年ではキャリア採用とともに新卒採用についても中長期的な視野にたち、採用・育成に注力しており、グループ全体の新卒新入社員数は、2007年度は83名、2008年度は92名、2009年度は77名でした。そもそもインターネットの技術は国際的な協力のもとに進歩してきたものでもあり、人材採用においては、たとえば当社の技術研究所にはアメリカ人・フランス人・ベルギー人などがキャリア採用として入社していますし、新卒採用ではアジア人のほか、セネガルやコートジボアールなどアフリカ人のエントリー・入社が続いています。これは意識しているものではなく、アフリカ人留学生の間で、当社の評判が口コミで広がった結果、応募者が増えているようです。

Q. 求める人物像と採用上の工夫点を教えてください。

採用時に重視するのは能力、モチベーション、性格の3点です。当社では筆記試験は行っておらず、面接での評価がすべてであり、面接も実際の現場部門の担当者が行い決定します。面接では「これができます」というよりは「何をしたいのか」という点を重視して面談を進めています。外国人社員については日本の理工系人材の減少など中期的に構造的な課題が存在する一方、理工系留学生の母集団自体は小さいので今まで以上に留学生など優秀な人材を積極的に採用しに行く必要を感じており、現在もいくつかの大学や合同企業説明会への参加やインターンシップの受入をしています。今後も効率のよい採用チャネルを構築していくことが課題だと考えています。
 また、採用を通じて感じることとして、通常の新卒採用の場合、大学3年生時など卒業まで一年以上ある段階から始まりますが、留学生の場合、その後1年間の日本語能力の向上の可能性を考えると日本人と同じ時期に採用・内定だしをすることが本当に適切なことであるのかということはきちんと考えていく必要があると思います。

Q. 外国人社員の活用・育成について教えてください。

外国人社員の場合に見られる特徴として目的意識・スキルアップへの意欲が高いがゆえに、時に本人の志向性と組織の求めるものにギャップが生じるというものがあります。これは優秀であるがゆえに、組織のミッションや役割よりも、個人のキャリアアップ、スキルアップを優先しがちになるためです。ここで大事なのは本人の性格や柔軟性ですし、当社としてもこのような課題・ギャップが生じた場合には部門の上司のみならず、必要に応じて人事や役員が都度、個別に面談等の対応をしています。一方で、外国人社員・日本人社員問わずいわゆる一律の典型化されたキャリアパスというものはあえて提示していません。
 その代り、専門性などキャリアマップを提示し、その中で社員一人一人が自律的に自分のキャリア形成を考える仕組みを採用しています。これは当社の社長の考えでもあり、私たちもいつも「型にはめないように」と言われています。実は今の人事制度ができたのは比較的最近である4年前です。基本的には「一人ひとりを人間が見ていく」という発想をしており、「本人がその仕事をしたければ自分で手を挙げるはずである」という考えに基づいています。また、一度当社を退職した方でも、再入社をするなどいわゆる「出戻り」も全く問題なく柔軟に対応をしています。

Q. 今後の課題や取組についてのお考えはありますか。

先ほど申し上げたようにあえて「型にはめない」状態を維持しつつ、事業展開に応じた人材の採用・育成というのは当然課題となります。日本のインターネット産業の勃興とともに生まれ、成長してきた当社は現在クラウドコンピューティングをはじめ、新規分野への取組を始めていますが、これらの事業展開を踏まえ、「当社にとってあるべき人材採用・育成のあり方」を考えていく必要を感じており優秀な外国人社員の採用と活用も取り組んでいくべき課題のひとつです。

〈企業情報〉
株式会社インターネットイニシアティブ
(Internet Initiative Japan Inc.)
設立 1992年12月3日
決算期 3月31日
本社所在地 東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング
資本金 142億9500万円(2009年5月15日現在)
売上 697億円(2009年3月期・連結)
従業員数 連結1,602名 単体698名(2009年3月末現在)
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