取り組み事例紹介

アルプス電気株式会社

〈業種〉電気機器 ─〈分類〉コミュニケーション(対人適応)

自社イズムのグローバルな浸透

Q. 外国人社員活用の背景と現状を教えてください。

当グループは電子部品を提供する「アルプス電気」を中心に、モービルメディアソリューションに取り組む「アルパイン」、電子部品に特化した総合物流サービスを展開する「アルプス物流」など、グループ82社のネットワークを世界に広げています。その中でアルプス電気は、全世界で約37,000名のうち、日本にいる社員は約6,000名に過ぎず、3万人が海外の社員です。海外拠点は製造拠点だけでなく、上流工程である設計開発の拠点もあります。また、従来は「日本と海外のある拠点間での事業」というような本社中心・個別対応型海外事業でしたが、現在は「海外の拠点間同士の事業」など、いわばWeb型の海外事業となっており、グローバルベースでの総合力発揮と人材育成・活用が重要な経営課題となっています。海外拠点間の人材異動もダイナミックに行っており、韓国の人材をEUに異動させるなど、地域性を考慮しつつも経済ブロックを越えた人材の登用も行っています。

Q. 外国人社員の活用形態と施策について教えてください。

このような事業背景のもと、日本国内における外国人社員の活用については「海外大学を卒業した外国人新卒学生の採用(IAP)」「日本国内の大学を卒業した外国人留学生の採用」「海外法人から日本への受入出向(インパトリエット)」「海外大学生のインターン受入」などがあります。
 このうち、「海外大学を卒業した外国人新卒学生の採用(IAP)」「海外法人から日本への受入出向(インパトリエット)」について紹介しますと、前者の「海外大学を卒業した外国人新卒学生の採用」は1989年から行っているものでIAP(International Associate Program)と呼ばれるものです。当初2年間は契約社員として働き、満了後、双方合意のもと日本国内で正社員として働くか、現地法人で働くか、退職等その他の進路に進むかという選択をします。また、この2年間は人事考課の対象にはしていません。今まで75名が満了していますが、うち58%はその後もアルプス電気で継続して働いています。IAPの導入はもともとアイルランド政府産業開発庁のプログラムをきっかけとしており、アイルランドからは今まで67 名を受けいれてきた実績があります。2005年からはフランス・ドイツ・スウェーデン・チェコ・アメリカ・マレーシアなどに拡大をし、当社拠点を通じて行っています。
 この目的はグローバルに活躍できるアルプス人材を育成すること、日本においても内なる国際化を推進すること、当社自体がグローバルなリテラシーを身につけることなどです。来日当初は2.5カ月ほど日本語研修を行います。個人差はあるものの、一般的には業務レベルには到達しないので各部署に配属後も引き続き業務以外に学習をしてもらい、教材学習・提出を通じた通信教育をおこなったり、3カ月に1度本社にて集合研修をおこなったりしています。
 受入部署においては、直属の上司など日本人の「外国人社員対応能力」も大切な要素です。当社の場合、常時200名程度が日本から海外に駐在をしていますので日本国内においても海外駐在経験者が比較的多く、外国人社員の受入に際しては各部署で彼らのグローバル対応力も大きく寄与しています。
 また、「海外法人から日本への受入出向(インパトリエット)」は各国の当社現地法人より日本に1~2年間出向をするというものですが、今まで22名の実績があります。この目的はグローバルな人材活用と合わせ当社の考え方、いわばアルプスイズムを理解してもらい、帰国後各拠点にも浸透をさせていくというもので、対象は中堅以上の社員となります。

Q. 今後についての課題や取組についてお考えはありますか。

「海外大学を卒業した外国人新卒学生の採用(IAP)」に関する課題はいくつかあります。一つには2年間のプログラムにおける教育内容・体制整備であり、人事考課は行わないものの、目標管理をきちんとしていく必要を感じています。また、指導員が付くパートナーシステム、定期的なメンバーの相談会、2年満了後のキャリアプログラムなども整備していく必要を認識しています。
 今後は対象地域を拡大し、東欧や中国などにも取り組んでいきたいと考えています。「IAP満了者の雇用」についての課題は受入部署向けの教育、受入マニュアル・教育ツール整備、本人の意識教育などが挙げられますが、周囲からの適切なフォロー、目標設定などキャリアの見える化、人事部門にIAP出身者を登用するなどによって対応をしていきたいと思っています。
 「海外法人から日本への受入出向(インパトリエット)」については世界各国の拠点から個別に来日するため、言語レベルや業務内容にばらつきがあることは否めず、結果としてミッション確認や人脈作りが目的化してしまうこともありますのでこの点は今後の対応課題だと考えています。
 今後は事業のグローバル最適配置が進む中で、アルプス電気の企業理念やアルプスイズムをきっちりと理解し、浸透させることのできる人材をグローバルに輩出していくことに取り組んでいきたいと思います。

〈企業情報〉
アルプス電気株式会社
(ALPS ELECTRIC CP.,LTD)
設立 1948年11月1日
本社所在地 東京都大田区雪谷大塚町1-7
資本金 236億230万円(2009年3月31日現在)
売上 単体2,462億8,100万円 連結5,389億9,500万円(2009年3月期)
従業員数 国内5,805名 グローバル37,656名(2009年3月期)
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