取り組み事例紹介

丸紅株式会社

〈業種〉卸売 ─〈分類〉コミュニケーション(対人適応)

現地法人の幹部育成を目的とした受入出向の実施

Q. 外国人社員活用の背景と現状を教えてください。

当社は総合商社として、食料、繊維、機械、金属・エネルギー資源、化学品、紙パルプなどの輸出入・外国間取引・及び国内取引から、資源開発、電力事業、建設・不動産業務、金融ビジネスまで広範な分野での商品取扱・事業運営をグローバルに展開しています。トレードから投資事業まで事業領域が非常に幅広く、かつ世界69カ国で114カ所の海外事業所を展開しているため、あらゆる分野で活躍できるグローバル人材を必要としています。当社の総合職約3,000名のうち、海外駐在している人間が常時20-25%いますが、2008年から2ヶ年の中期経営計画では施策のひとつとして人間力強化を掲げ、「多様な人材の活用・登用」「連結経営を担う人材の育成」「ワークライフバランス」を推進してきました。今後の新中期経営計画では、HR(ヒューマンリソース)と「グローバル」のキーワードが盛り込まれる予定であり、多様な人材の活用を更に強化していきます。この方針を踏襲・強化していく予定です。このような背景のもと外国人社員の活用についても1990年代前半に人事部に外国人社員を配属させるなどの取組を続けており、現在約50名の社員が全社で活躍しています。新卒採用における位置づけは特に外国人留学生枠等は設けていませんが、この数年は、毎年数名を採用しており、今後も増やしていきたいと考えています。

Q. 求める人物像と採用上の工夫点を教えてください。

当社は採用コンセプトを「ジブンカラー」と表現しているのですが、学生の皆さんに求めていることは2つあります。一つ目は「自分の色(カラー)」、すなわち個性を持つことです。当社は総合商社であり先ほど申し上げたように世界中で多様な社員によって多彩な形態のビジネスを展開していますので年齢や役職に関係なく個性を尊重し、風通しの良い風土が形成されています。入社いただく方々には存分に個性を発揮していただきたいと思っています。二つ目は、「自分から(自ら)」行動をするということです。当社は若手に積極的にチャンスを与える風土がありますので自ら課題を見つけ、主体的に考え、行動に移せる方に、是非入社していただきたいと考えています。
 これらの採用コンセプトを基本としており、選考では特に人物重視で行なっていますので、文系・理系、学部生・院生で特に違いがあるわけではなく、留学生や外国籍の方々についても国籍に関係なく採用しています。選考も日本人学生と全く同じ選考基準・スケジュールで受験いただいています。ただしエントリーをしていただく母集団が日本人学生とくらべ留学生の場合圧倒的に少ないので、母集団の拡大のため、留学生向けのセミナーで説明会を開催する等の工夫を行っています。近年では中国、韓国、インドネシア、アメリカ等の外国籍の方が入社しています。

Q. 外国人社員の活用・育成について教えてください。

現地法人の社員向けには「帰属意識の向上、育成の促進」を目的としてEラーニングを通じた日本語学習機会を提供しています。日本語学習の場合は全世界レベルでの底上げをイメージしていますが今後は社史・経営理念・経営計画についての自社基礎コンテンツの作成を検討しています。
 また、海外現地法人から日本本社への受入出向(逆出向、インパトリエット)も1980年代から推進しています。元々は欧米からの受入が多かったのですが、近年では中国・台湾・韓国・インドなどからの受入が増えており、常時10名程度受け入れています。受入出向は人材育成という色彩が強く、現地法人において幹部人材に登用するに際し、本社や日本国内の顧客とネットワークを作ってもらうことを目的としています。これにはグローバルに事業領域と規模が拡大するにつれ、特に事業投資など、大きな案件は各拠点では完結せず、全社的な視点で判断をする必要があるのです。その意味でグローバル展開が高度化・高速化するからこそ、本社の考え中や人脈などネットワークが今まで以上に必要となっているのです。
 一方で、本社における人材育成については入社時の研修はじめ、日々のOJTを通じ取り組んでいます。OJTも、各種社内研修も、外国人社員だから、と考えることはなく、あくまでも個人の性格に基づくものであると考えており、国籍等を考慮して対応することはありません。管理職への登用については通常、入社9年目から管理職となりうるのですが過去には副部長や海外事業会社の社長になった外国人社員もいます。

Q. 今後の課題や取組についてのお考えはありますか。

ご説明してきたように、本社においては国籍等考慮せずに外国人社員採用を進め、現地法人の拡大のためには海外駐在員および本社への受入出向を進めてきました。今後は今まで以上にグローバル展開における本社人事機能のあり方・位置づけを明確化させていきたいと考えています。海外拠点の人事上の課題はそれぞれの現地法人が対応一方、全社で参考にできるベストプラクティスやモデルケースなどは本社に集約し、各拠点に提示するなど全体的な方向性などを提示し、各事業展開を支援できるような対応をしたいと考えています。

〈企業情報〉
丸紅株式会社
設立 1949年12月1日
決算期 3月31日
本社所在地 東京都千代田区大手町1-4-2
資本金 2,626億8600万円(2009年3月期)
売上 10兆4,621億円(2009年3月期 連結)5兆8,070億円(2009年3月期 単体)
従業員数 3,971名(2009年4月 単体)30,426名(2009年3月末 連結)
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