Q. 外国人社員採用の背景と現状を教えてください。

IHIは2007年に社名を「石川島播磨重工業株式会社」から現在の「株式会社IHI」へ変更しました。IHIグループは、株式会社IHIのほか、関係会社が183社あり、物流・鉄構事業、機械事業、エネルギー・プラント事業、航空・宇宙事業、船舶海洋事業、その他事業の6部門に関する事業を主として行っています。 グループのダイナミズムを活かし、製品のみを提供するのではなく、エンジニアリングをはじめとしたトータルソリューションを提供しています。社名変更を契機にIHIグループ全体でブランド戦略を強化し、より先進的なグローバルブランドへの成長を目指しており、グループ経営方針ではグローバル化の深化を掲げています。当グループの考えるグローバル化とは世界の個別ローカル市場のニーズを徹底的に把握するとともに、グローバルに展開される社内外の経営資源を最適に配置し、効率的に製品およびサービスを提供できるネットワークを構築することであり、これを実現するための組織・体制や人材上の取組を行っています。
　このような背景を踏まえ新卒採用を行っていますが、採用方針としては長期的な人員計画に基づき、景気に左右されない採用をしていくというものであり、毎年一定人数を採用していく考えです。外国人社員の採用については従来から国籍不問採用という形で進めていますので、特別なことと考えてはおらず、部長になった方もいます。あえて「外国人社員の採用」として意識をして取組を始めたのは最近のことです。当社における目的・位置づけは女性や障害者の登用と同じく、組織内において多様性を確保するためのダイバーシティ・マネジメントの一環であり、2年前に韓国での新卒採用をスタートさせ、国内の留学生採用とあわせ2009年には15人、2010年には6人の外国人社員が入社しています。

Q. なぜ韓国での採用なのでしょうか。また、採用から入社までのプロセスや工夫点について教えてください。

海外採用については多様な対象国から優秀な人材を採用したいという想いがあり、その第一歩として地理的にも近く、文化的な親和性も高い韓国からスタートをしています。また、韓国の場合は政府系の韓国産業人力公団からのサポートもあります。採用から入社までのプロセスは日本における新卒採用活動と基本的に同じで、会社説明会、エントリーシート提出、技術試験・小論文、適性検査・技術面接（含む筆記試験）、配属面接という流れになります。
　会社説明会では既に2年間の実績があるため来日・入社した先輩社員からの声やアンケート、入社してよかったことなどを紹介するなど実際の入社後に働く姿をイメージしてもらえるような情報提供や海外の学生が一番興味をもつ入社後のキャリアについて外国人籍の部長が在籍する話、一般的なキャリアの時間軸の説明などを行うようにしています。配布用パンフレット（会社案内兼募集要項）は韓国語で作成しましたが、エントリーシート、小論文は日本語での記述となります。適性検査、技術面接、配属面接に際しては来日してもらい実施しており、渡航・宿泊費用は当社にて負担をしています。また、日本語研修については内定式以降、来日前に実施しています。初年度は全員を集めて週1回5ヶ月、日本語が全くできなかった1名はさらに個別に実施しましたが、現在は韓国の日本語学校で個別に4ヶ月実施しています。韓国人以外でも日本語学習をする必要のある方は、社内で日本語教室を開催して、日本語能力の補足学習を行っています。今後は日本人社員に対しても異文化コミュニケーション研修の実施などを検討していきたと思います。入社時の新入社員研修は日本人の新卒と一緒に行っていますが、同期入社同士のつながり・連帯感を醸成する場にもなっておりよい効果があります。当社内定者向けに社内ホームページがあるのですが、そこでは入社前から内定者同士が交流できるようになっており自分たちで連絡を取り合い、入社前に韓国採用の学生とコンタクトをとり韓国旅行をして交流してきた、などということもあるようです。このようなこともあり、韓国人新入社員も入社当初は固まって行動していたようですが、今は社内に溶け込み、個別に活動をしているようです。

Q. 今後の取組について教えてください。

入社頂いている方々はモチベーション高く、優秀ですので職場での評価も高く、日本人社員にとってもよい刺激にもなっているようです。当社では長期間にわたる人材育成を行っているので、ぜひ長く働いてもらいたいと考えており、今後は今いる方々の定着を図りつつ、継続的に優秀な人材を採用していきたいと思います。また、私自身も女性としてのキャリア形成をしてきた立場にいますが、海外採用の方々の中からもキャリア形成上のロールモデルとなる方が出てくることが中期的な課題だと考えています。当社においては30代後半で管理職となることが一般的ですが、この当社におけるキャリア形成への時間軸をよく理解してもらい、長期にわたり活躍してもらいたいと思っています。